白鴎大学 HAKUOH UNIVERSITY

法学部

教員紹介詳細

教員氏名 佐竹 壮一郎(サタケ ソウイチロウ)
職名 講師
最終学歴・学位 同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程後期課程・博士(政治学)
専門分野 現代ヨーロッパ政治
学協会活動 日本EU学会・日本国際政治学会・日本政治学会
【主な著書・論文等】
業績は以下のリサーチマップをご確認ください。
https://researchmap.jp/ssatake


◆◆◆◆◆ その他 研究内容・学生へのメッセージ ◆◆◆◆◆

【問題関心】
 私の専門分野は現代ヨーロッパ政治、特にEUの動向に関心をもっています。現在27か国からなるEUはしばしば国家でも国際機関でもない「独特な」政体と評されてきました。私の問題関心は、こうしたモヤモヤした存在であるEUにおける変化と現状維持の政治力学を捉えることにあります。

【現在の研究テーマ】
上記力学を捉えるため、現在の研究テーマとして、EUにおける民主主義の赤字と権威主義化の相互的影響の解明を掲げています。
 近年、世界各地で権威主義化や「民主主義の後退」が主要な論点となっています。しかしながら、権威主義体制の戦略性の高さが明らかにされる一方、民主主義体制の動向はその課題も含め十分に解明されていません。その最たる例としてEUが挙げられます。
 EUは民主主義に基づく国際的な政治体制を自負しています。にもかかわらず、EU市民権が誕生したマーストリヒト条約の調印(1991)以降、EUは市民による民主的統御が行き届かない「民主主義の赤字」状態に陥っていると指摘されてきました。また、域内における世論の分極化や権威主義化が21世紀に入り確認されています。これまでの研究において両者は別個の課題として認識されていましたが、EUの現在を捉えるにはどちらか一方に着目するだけでは十分とはいえません。EUはどのように民意のくみ取り方を更新しているのでしょうか。また、域内における分極化や権威主義化にEUはいかに対応しているのでしょうか。こうした問いに回答するために、欧州市民発議や様々なオンラインプラットフォームの形成過程に焦点を当てて分析を進めています。
 本研究を通じて、「権威主義対民主主義」論の死角がより具体化され、また統合を進める民主主義体制の構築・維持・変容のメカニズムに関する新たな知見がもたらされます。さらに、民主主義と権威主義の相互的な影響や共通性をめぐる研究は今後さらなる発展が望まれている分野です。こうした研究動向の中で、本研究は「独特」と評されるEUを比較可能な参照軸として再提示する役割を果たし、地域統合研究の進展や国際秩序に着目する研究への波及効果も期待できます。

【学生へのメッセージ】
 私が1人の研究者、そして社会人として意識していることは次の3つです。第1に、問いを掲げるということです。論文には必ず問いとその回答が示されています。問いがないと論文とはいえません。このように述べると難しいと思われるかもしれませんが、皆さんも日々の生活において問いを立てているはずです。例えば、初めての1人暮らしや大学の講義、アルバイトや友人との会話の中で「なぜ」とイライラ・モヤモヤしたことはないでしょうか。それらの違和感はあなただけのものではなく、社会的課題かもしれません。そして、その社会的課題の解決策を提示するのはあなたかもしれません。まずは、大学生活の中でたくさんの違和感を経験し、感性を磨いてください。
 第2に、面白さと習慣化の両立です。たしかに、研究や講義には面白いと感じる瞬間があります。しかしながら、その瞬間がおとずれるのは稀です。論文が公表に至るまでの営みの中には、地味かつ手間のかかる作業がたくさんあります。1つの講義を用意するにも、90分間以上の手間がかかります。さらに、大学の教員には講義や研究以外にも様々な業務をこなすことが求められます。こうしたマルチタスクの中で自分らしさを成り立たせるものが習慣だと思っています。私にとって、自分の専門であるヨーロッパ政治をめぐるニュースや論文をチェックすることは習慣です。必ずしも楽しいからチェックしているわけではありません。いうなれば、私にとって研究や講義は歯磨きのような側面が強いです。歯磨きの時間が楽しくてワクワクが止まらないという方は少数派だと思われますが、ほとんどの方にとって歯磨きは習慣化していることでしょう。この習慣化している歯磨きですが、無数の道具にあふれており、いくらでもこだわれます。こうした習慣が私の研究や講義づくりに大きく寄与しています。面白さとこだわりある習慣が両立しうる何かが見つかれば、それはあなたにとって天職となるかもしれません。
 最後に、失敗からは逃れられないということです。18歳の頃の私にとって、最大の失敗は第1志望の大学に行けなかったということでした。ところが、今の私からするとそれは数ある失敗の1つにすぎません。約10年を経た今も失敗し続け、度々「1人反省会」を開催しています。研究者という立場にある以上、常に他者から評価されます。私が面白いと感じた研究だとしても、それを高い解像度をもって伝えられない限り、他者には理解されません。たしかに、失敗をしたときは恥ずかしくなります。自分が嫌になります。それでも、挑戦し続ける限り応援してくださる方も数多くおり、その期待に応えたいとも思います。大学には、挑戦し続けるあなたを応援する人であふれています。一緒にたくさん失敗していきましょう。