白鴎大学 HAKUOH UNIVERSITY

法学部

教員紹介詳細

教員氏名 佐竹 壮一郎(サタケ ソウイチロウ)
職名 講師
最終学歴・学位 同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程後期課程・博士(政治学)
専門分野 現代ヨーロッパ政治
学協会活動 日本EU学会・日本国際政治学会・日本政治学会
【主な著書・論文等】
業績は以下のリサーチマップをご確認ください。
https://researchmap.jp/ssatake


◆◆◆◆◆ その他 研究内容・学生へのメッセージ ◆◆◆◆◆
【問題関心】
 私の専門分野は現代ヨーロッパ政治、特にEUの動向に関心をもっています。現在27か国からなるEUはしばしば国家でも国際機関でもない「独特な」政体と評されてきました。私の問題関心は、こうしたモヤモヤした存在であるEUにおける変化と現状維持の政治力学を捉えることにあります。

【現在の研究テーマ】
 EUにおける変化と現状維持の政治力学を理解するため、現在大きく3つの研究テーマを掲げています。第1に、EU市民の政治参加についてです。かねてより、EUでは政治家や官僚などの政治的エリートが統合を進めた一方、EU市民がその動向に与える影響は限定的でした。ところが、1990年代に入ると、蚊帳の外にいたとされる人々の選択により統合の行方が左右され始めました。この動きに対し、EUでは市民の声を吸収しようとする試みが展開されてきました。しかし、EUはすべての人々の声を反映する機械ではありません。では、EUはどのように市民の声を聞き、どのような「解決策」を提示しているのでしょうか。こうしたEUにおける政治参加の特徴と課題について研究を進めています。
 第2に、EUにおける境界線をめぐる問題です。一方では、欧州統合は様々な境界線を薄める過程と言い換えられます。例えば、ヨーロッパを訪れると「気づけば国境を越えていた」という出来事を経験します。これは国境管理を忘れているのではなく、「シェンゲン協定」という合意に基づくものです。また、「ユーロ」と呼ばれる通貨がEUの加盟国のうち20ヵ国で用いられています。この共通通貨により、人々は為替レートを意識することなく国境を越えて買い物をすることができます。さらに、21世紀に入るとEUは東欧への拡大を果たしました。こうしてみると境界線はずいぶんと薄く感じられますが、統合はその線引きを抹消するものではなく、新しい区分を生じさせます。つまり、統合と境界線の形成は必ずしも相反するものではありません。そこで、この両者の結びつきを描いていくことを目指しています。
 第3に、EUにおける価値をめぐる問題です。EU条約第2条では、人の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する人々を含む人権の尊重の6つがEUの価値として掲げられています。このように簡潔に示すことができるものの、価値解釈の幅は広く、加盟国間、または加盟国内でもズレが生じています。さらには、欧州委員会が掲げる価値も、その発足から70年間の中で変化してきました。こうした普遍的だとされる価値の不変ではない側面を分析することが今後の研究課題です。

【学生へのメッセージ】
 私が1人の研究者、そして社会人として意識していることは次の3つです。第1に、問いを掲げるということです。論文には必ず問いとその回答が示されています。問いがないと論文とはいえません。このように述べると難しく感じるかもしれませんが、実は皆さんも日々の生活の中で問いを立てているはずです。例えば、初めての1人暮らしや大学の講義、アルバイトの中で「なぜ?」とモヤモヤしたことはないでしょうか。その違和感はあなただけのものではなく、社会的課題かもしれません。そして、その社会的課題の解決策を提示するのはあなたかもしれません。まずは、大学生活の中でたくさんの違和感を経験し、感性を磨いてください。
 第2に、面白さと習慣化の両立です。たしかに、研究には面白いと感じる瞬間があります。しかしながら、その瞬間がおとずれるのは稀です。論文が公表に至るまでの営みの中には、地味かつ手間のかかる作業がたくさんあります。それを助けてくれるのが習慣だと思っています。私にとって、自分の専門であるヨーロッパ政治をめぐるニュースや論文をチェックすることは習慣です。必ずしも楽しいからチェックしているわけではありません。いうなれば、私にとって研究は歯磨きのような側面が強いです。皆さんにとっても歯磨きは習慣化したものだと思います。ただし、歯磨きは無数の道具にあふれており、いくらでもこだわれます。こうしたこだわりある習慣が私の研究に大きく寄与しています。面白さとこだわりある習慣が両立できる何かが見つかれば、それはあなたにとって天職となるかもしれません。
 最後に、失敗からは逃れられないということです。18歳の頃の私にとって、最大の失敗は第1志望の大学に行けなかったということでした。ところが、今の私からするとそれは数ある失敗の1つにすぎません。10年を経た今も失敗し続けています。研究者という立場にある以上、常に他者から評価されます。私が面白いと感じた研究だとしても、それを高い解像度をもって伝えられない限り、他者には理解されません。たしかに、失敗すると恥ずかしくなり、自分が嫌になります。それでも、挑戦し続ける限り応援してくれる人も数多くおり、その期待に応えたいとも思います。大学には、挑戦し続けるあなたを応援する人であふれています。一緒にたくさん失敗していきましょう。