教員氏名 | 下村 健一(シモムラ ケンイチ) |
職名 | 教授 |
最終学歴・学位 | 東京大学法学部第3類(政治コース)・法学士 |
専門分野 | マスコミュニケーション、ジャーナリズム、メディアリテラシー |
学協会活動 | 日本災害情報学会 |
【主な著書・論文等】 |
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〔出版物〕
「答えはひとつじゃない!想像力スイッチ・第3巻」編著 /汐文社 2021.3 「マンガでわかる 世の中のウソから身を守る」監修 /学研 2021.2 「窓を広げて考えよう~体験!メディアリテラシー」単著 /かもがわ出版 2017.7 「想像力のスイッチを入れよう」単著 /講談社 2017.1 「10代からの情報キャッチボール入門 ~ 使えるメディアリテラシー」単著 /岩波書店 2015.4 「首相官邸で働いて初めてわかったこと」単著 /朝日新聞出版 2013.3 「マスコミは何を伝えないか」単著 /岩波書店 2010.9 「ジャーナリズムの条件・第4巻」共著(筑紫哲也、他) P.114~123 /岩波書店 2005.5 「報道は何を学んだのか」共著(河野義行、他) P.58~63、他随所 /岩波ブックレット 2004.10 〔刊行された論考等〕 「前代未聞の大反響『SOS!100円ダイヤル』」(下村が開発した在宅募金システム)/TBS社報1993年2月号 「想像力のスイッチを入れよう」/三省堂『ことばの学び4号(メディア・リテラシー特集)』2004.2 「市民メディア・アドバイザーが感じる現状とこれから」/中央評論2004年夏号 「菅内閣の情報発信――元・報道マンの中間報告」/調査情報2011年7・8月号 「政権交代と広報」/調査情報2012年3・4月号 「官邸から見た震災・原発事故・メディア」/岩波『世界』2012年6月号 〔テレビ・ラジオでの口頭発表〕 「それから」(約30本)…敢えて旬を過ぎた出来事に特化して、掘り下げ。(『筑紫哲也NEWS23』内) 「ずばッとリポート」(400本超)…その週の既報ニュースの視点をずらす。(『サタデーずばッと』内) 「下村健一の眼のツケドコロ」(約500本)…他メディアが顧みないテーマを拾って報告。(TBSラジオ) ◆◆◆◆◆ その他 研究内容・学生へのメッセージ ◆◆◆◆◆ 【問題関心】 ●私は、TBSの報道アナウンサーとして約15年、フリーキャスターとして10年、計四半世紀にわたるTVジャーナリズムの最前線での体験から、現代日本社会があらゆる場面で抱える“コミュニケーション不全”の実態を直視してきた。国会でも、職場でも、教室でも、サークルでも、町内会でも……うまく伝えられない発信者と、的確に受け取れない受信者。 その山積する問題を、既存の学説には登場しない報道現場発の新しい視角で解析し、“出口”(解決策)を探す。それが私の最大の関心事であり、また現場取材体験者としての使命でもあると思っている。本学で開講する個々の講座タイトルとは直接関係が無くとも、あらゆる授業の根底には、この問題意識がベースとなっている。 ●今、インターネット技術の発達に伴い、マスメディアとは別個の存在として、一般人が伝え手となる「市民メディア」が急速に台頭しつつある。あなたがSNSで何かを発信した瞬間、あなた自身もメディアとなるのだ。そこには、大いなる可能性(既存メディアには無い新鮮な視点や表現など)と同時に、危うさ(情報判断の甘さや思い込みの拡散、その結果としての社会の分断の助長、等)が含まれている。前項で述べた“コミュニケーション不全”現象も、SNSの普及に連れて深刻化の一途をたどっている。 JIMA(インターネットメディア協会)理事として、ネットメディア界の全体状況が概観できるポジションにいる私は、流れ込んで来る最新情報を授業に投影して、学生たちと共に考えたい。 「情報化社会」とは、膨大な数の「情報」という名のボールが、四方八方から無秩序に飛び交う時代でもある。如何にして、エラーせずに捕球し、暴投せずに投球するか。情報キャッチボールの技術を身につけることは、これから社会に出て行く学生諸君にとって、極めて重要な《自衛》であり《責任》である。 ●英国のEU脱退、米国でのトランプ大統領の誕生など、2016年に相次いだ「プロの予想外の出来事」は、《流れを決めるのは結局、大衆の判断である》というシンプルな現実を示した。複雑な事実報道よりも歯切れ良いフェイクニュースが力を持ち、多様な要素に配慮した中庸な政策決定よりも、単純明快で喝采を浴びやすい極端な政策決定が力を持つ時代に突入していったら、世界はどこへ向かうのか。 そんな危うさを食い止めるには、まさに《大衆》自身が判断力を向上させるしかない。そのために何よりも不可欠なのが、《判断材料の供給》だ。インテリ村の住人だけが理解できる閉鎖的ニュースから、誰もが理解できる開放的ニュースへの転換で、わかりやすく判断材料を社会が共有できるようにすること。そんな“ニュースの解放”を担えるのは、従来のプロとは違う、ごく普通の人々――例えば若い世代で言えば、白鴎大生に他ならないのかも知れない。 ●私はまた、2013年春までの2年半、民間登用で内閣広報室の中枢に勤務し、「首相官邸の情報を如何にわかりやすく国民に伝えるか」という仕事に従事した。思いがけず任期の殆どが震災・原発事故対応で占められることになり、(幸い使わずに済んだが)「東日本全員避難指示」の首相会見原稿の準備など、《正確に伝える広報》の難しさを極限まで体験することとなった。 そんな修羅場で様々な助言を与えてくれた、人気ブロガ―やプロの広告マンたち。彼らとタッグを組んで得た体験を、普段の広告や広報の制作に投影することは、《より良いコミュニケーション》という観点からも、有意義だと思っている。 ●最先端のテクノロジー(表現ソフトなど)を操る事には、重きを置かない。それを軽視する意思は全く無いが、それ以前にもっと重要なこと―――道具の進化に目を奪われて疎かになりがちな、いつの時代も変わらぬ《1個の人間としてのコミュニケーション能力》(表現力・質問力・傾聴力・対話力・課題発見力など)を磨くことを、まず大切にしたい。 【現在の研究テーマ】 ●悪意のフェイク情報や善意の思い込みデマ等に翻弄されない《眼力》を一般大衆に普及させる、具体的方法論の開発(“ソウカナ”メソッドなど) ●リーダー待望の「お任せ民主主義」から、自分達の手で作り上げる「参加型民主主義」に、日本社会は脱皮できるのか。できるとすれば、それは如何なるアプローチによってなのか。 ●情報発信主体が多様化する中での、大手メディアとは異なる、市民メディア固有の役割や危うさとは何か。 ●情報伝導率(10聞いた事の内、幾つを他者に伝えられるか)を向上させるメソッドとは何か。 【学生へのメッセージ】 わからないモヤモヤがあるのに質問しない人、来ないで下さい。 ---下村の説明中に割り込んででも手を挙げる人、来て下さい。 泳ぎ方を本で学びたい人、来ないで下さい。 ---とにかく水に飛び込んで身体で学びたい人、来て下さい。 ただ単位を取りたいだけの人、来ないで下さい。 ---授業で何かを得て、《社会の一員としての責任》を担えるようになりたい人、来て下さい。 |