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PRESIDENT OF HAKUOH UNIVERSITY

MESSAGE 18

HAKUOH NEWS 24号

HAKUOH NEWS 24号

地域貢献と白鷗大学の近未来


学長 奥島 孝康


 大学の目的は、教育と研究、そして社会貢献である。しかし、社会貢献が指摘されるようになったのは近々30年ほど前のことにすぎない。ところが、わが大学の学祖上岡一嘉初代学長は、当初からこのことを重視してきた。見識である。


 後発の白鷗大学が生き残る道を探るとすれば、郷土に愛される「大学」でなければならない。つまり、郷土で愛されること、そして大学らしい大学であること、という二大条件が必要である。そこで、まず第一に「愛される条件」とはなにか。それはなによりも地域で好かれる人材を供給することであろう。つまり、ゆとりある温和な人物ということであろうか。青白い顔をしたトゲトゲしい人柄ではなく、にこやかに事柄をゆったりと受け止める、余裕と自信をもったスポーツマンタイプのタフな人物像ではないか。北関東の大地にマッチした雰囲気を漂わせ、しっかり者として信頼される人間を育てることが必要である。それは、女学校として「強く、優しく」をモットーに発足した本学の教育そのものがもつベーシックな性格である。

 もう一つの条件、「大学らしい大学」とは、中世のヨーロッパの大学のように、国際的大学の雰囲気につつまれた「若き情熱野の学府」であろう。そのため、本学は設立の当初から英語教育を重視し、短期留学や交換留学に力を入れてきた。もとより、国際化教育として十分といえるほどの水準に達しているとは言いがたいが、その方向性は本学の基本的性格として固まりつつあると言ってよい。


 確かに、日本人としてしっかりした教養を身につけ、さらに国際人としての基礎を確立するということは、そうそう安易なことではない。しかし、日本人らしい日本人というべき中世の阪東武士を生み出した北関東の地盤の上で、国際感覚豊かは人間を育てるという実験は着々とその実を結びつつあるように見受けられる。それは何も大都市圏のみに見られる現象ではなく、北関東という大いなる田舎でも可能であるという新たな実験となるかも知れない。


 では、本学に可能な地域貢献とは、具体的にはどのようなものであろうか。例を挙げると、各地に今も残る地域文化の継承であろう。たとえば、伝統文化としての古民家再生街(蔵の街・栃木)、温泉郷(鬼怒川、塩原)や観光地(日光、足利、益子)の整備などは街なみづくりを得意とする学生チームの取り組むテーマとして適している。現地の住民には見えないものが、学生の新鮮な眼にはよく見えるからである。


 しかし、なんといっても、大学の社会貢献の主たる方向は、大学の資源の学外開放であろう。すなわち、社会人教育がそれである。もともと、教育も研究もベターワールドの創造を目的とする。したがって、大学の社会貢献とは、大学の教育力のエクステンションにすぎない。このエクステンション事業といわれるものこそがいわゆる社会人教育であり、一般にはカルチャーセンター事業などといわれているものである。


 幸いなことに、わが大学は、東北本線上に位置し、水戸線と両毛線とも交じる上に、駅前にメインキャンパスをもつ。まさに、エクステンション事業を予定したかのような位置にある。このメリットを生かさない手はない。日本はその人口構成からして、きわめて近い将来本格的生涯学習時代に入ることになる。近々10年以内にそのことを視野に入れた準備が必要である。しかし、大切なことは、そうであっても本学はあくまで「若き情熱の学府」としての姿勢を堅持する心意気を失わないことが必要である。


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