白鴎大学 HAKUOH UNIVERSITY

法学部

教員紹介詳細

教員氏名 神吉 尚男(カンキ ヒサオ)
職名 法学研究科長・教授
最終学歴・学位 慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・法学修士
専門分野 政治学
学協会活動 慶應法学会、日仏政治学会
【主な著書・論文等】
①「隠れし『神』の叛行―『六八年五月』とモーリス・クラヴェルの思想的挑戦」『慶應義塾大学大学院法学研究科論文集』昭和63年度第28号 (慶應義塾大学法学部内法学研究会)所収
②「価値のアナーキーに抗して―エマニュエル・ムーニエのファシズム論再考」『白鴎大学論集』平成3年8月第6巻第1号(白鴎大学)所収
③「さまよえる《政治的なるもの》を求めて―カール・シュミットの近代デモクラシー論」『白鴎法学』平成6年4月創刊号(白鴎大学)所収
④「《デモクラシー》のための反十字軍―エマニュエル・ムーニエによるプルードンの再評価」『法学研究』第七十巻第二号(平成九年二月、慶應義塾大学法学部内法学研究会)所収
⑤「ケンタウロスの列聖―『君主の罪』をいかにして贖うか」『白鴎法学』平成23年12月第18巻2号(白鴎大学)所収
⑥「タンタロスの責め―ジョン・ロックによる『思考物質』説の政治的含意について」『白鴎法学』平成29年7月第24巻1号(白鴎大学)所収
⑦共訳『20世紀を問う―革命と情念のエクリール』、フランソワ・フュレ他著、慶應義塾大学出版会、平成8年4月20日刊
⑧翻訳「ルソーと政治的同情心の発見」、クリフォード・オーウィン著、『白鴎法学』2003年5月第21号(白鴎大学法学部)所収


◆◆◆◆◆ その他 研究内容・学生へのメッセージ ◆◆◆◆◆
【問題関心】
 独りの人間の考えや行動と、集団あるいはその一員の考えや行動とは、まったく対照的なことがあります。他人の痛みに共感し慰めを与えられるひとが、詐欺まがいの強引な手法で利益の追求に血道を上げる営利企業に勤めていたり、逆に野卑で傲慢なひとが慈善団体の役員をしていたりすることがあります。「いじめ」にもそういう面がうかがえます。一対一なら「仲良しこよし」なのに、集団を後ろ盾にすると悪魔に変わるこどもがいます。二人の子どもを抱える親としての私は、どんな学生でもその一挙手一投足を微笑みながら温かく見守りたい気持ちでいっぱいなのですが、講義中にスマホをたからかに鳴り響かせたり、なんの遠慮会釈もなくずかずかと遅刻入室したり出ていったりする鉄面皮な学生を見ると、思わず呪いの言葉が口をついて出そうになってしまい、それを飲み込むのにひと苦労します。真・善・美について、独りの人間の認識と集団あるいはその一員としての個人の認識とが、そうとうずれていることは私自身についてもみうけられます。私が社会科の科目に興味をおぼえたのは、その“違い”に驚き呆れたからです。また人間が集団を作り、そのメンバーとなって生きるのはその本性によるという考えがあります。はたしてほんとうに本性からなのか。なぜいやな人間ともいっしょに集団の中で暮らしていかなければならないのか。集団とはいやなことをじっと我慢する辛い修行の場にすぎないのか。もっとなにか集団を形成して生きていくことにすばらしい価値はないのか。そのへんのこだわりが私の政治学、とりわけ政治思想への関心をうながし、今に至る研究の後押しをしています。

【現在の研究テーマ】
 両大戦間期のフランスにおける青年知識人の言論活動を精査し、彼らの「近代性批判」とファシズムとの結びつき、象徴体系としての国家的アイデンティティーの構築とそのねじれを検証することを、以前は天からの使命のように思っていました。現在はフランスにこだわらず、政治の働らきを心底「分かる」、「腑に落ちる」ための研究と教育に努めています。

【学生へのメッセージ】
 大学生は水準以上の学力を認定されて高等教育の最終段階にまで昇りつめるわけですから、誰からも『なるほど大学生らしい』と納得してもらえる証しとして、

・ものごとを前後左右上下から見る癖をつけ、「井の中の蛙」から卒業し、広い世界を見渡しながらさまざまなことがらを結びつけて考えられるよう努めてください。
・いろいろなひとびととじゅうぶんに意思疎通ができるよう、すくなくとも日本語(または母語)の語彙を豊かにしてください。
・「敢えて賢かれ!」本来ならさっさと社会に出て給料を稼ぎ、多くの人々から受けた恩に報いなければならないはず。それをしばらく猶予してもらえるのは、もっと勉強して、もっとたくさん恩返しできる人間になるためですよね。一人前などとケチくさいことを言わず十人前、百人前ぐらいになれるような、意欲的な勉強と引き換えに与えられる支払猶予期間であることをお忘れなく。それから、「分かりません」といって涼しい顔をしていないでください。“難しさ”を、学問研究(自分の脳ミソを働かせること)から逃げる口実にしないでください。難しいから学問研究する(自分の脳ミソを働かせる)値打ちがあるのではありませんか。どうしても、どうしても、ど・う・し・て・も分からないときは、せめて口惜しそうな表情を浮かべてくださいね。
・「独立自尊=誉れは自ら与えるもの」ひとに自分を頼りにさせて感じるマッチョな誇りではなく、ひとに頼りすがって相手に誇りを感じさせてやるブリッ子の満足感でもなく、自分の尊さはひとをあてにせず、自分の力で自分の中に磨き上げましょう。病める相互依存関係(共依存)の連鎖を断ち切るために。真に“親離れ”するために。とはいえ、独善的で自意識過剰のオレ様もいただけないことは言うまでもありませんが。
・いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうかからだ中に、知恵をたくさんよくもみ込んでください。